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東京地方裁判所 平成9年(ワ)18770号 判決 1999年3月26日

原告

青木司政

被告

堀米敦

主文

一  被告は、原告に対し、金一五〇万八四三七円及びこれに対する平成九年五月八日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その三を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金二三七万三一四二円及びこれに対する平成九年五月八日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、原告が、被告に対して、民法七〇九条に基づき、後記の交通事故により原告が被った損害の賠償を求めている事案である。

交通事故(以下、「本件事故」という。)の内容

(一)  日時 平成九年五月八日 午後四時三五分ころ

(二)  場所 東京都世田谷区野沢二丁目三〇番先路上

(三)  加害車両 被告が運転していた普通乗用自動車(品川三五さ四四四六)(メルセデスベンツ)

(四)  被害車両 原告の所有する訴外浦本理朗(以下、「訴外浦本」という。)が運転していた普通乗用自動車(所沢三三ね四一五七)(メルセデスベンツ)(原告所有の点につき甲第三号証)

(五)  態様 被害車両が停車中、被告が加害車両を運転して被害車両に追突させ、右追突の衝撃により被害車両を前に押し出し、前に停車していた車両に衝突させた。

二  争点

本件の争点は損害額である。

すなわち、被告は、本件事故は軽微な衝突に過ぎないから、原告主張の修理代金額は高額に過ぎ、また、実際に被害車両の修理を担当した訴外テックジャパンの提出している請求明細書や見積書には金額に齟齬があるとも主張している。

原告請求の代車料については、損害として発生する契機がないとして、その請求を否定している。

第三争点に対する判断

本件は前述のとおり、損害額が争点となっている事案であるから、原告主張の損害費目ごとに判断を示すこととする。なお、結論を明示するために、損害費目の冒頭に認容額を示し、併せて括弧書きで原告の請求額をも記載する。

一  被害車両の修理代金額 金一三五万八四三七円(金一四三万四一四二円)

被害車両は、前述のとおり、加害車両に追突されて後部に損傷を生じた上、追突されたために前に押し出されて被害車両の前車に追突したため、その前部をも損傷したものである。したがって、車両の前部及び後部に修理を要したもので(甲第一〇号証)、その修理明細(甲第一号証の二、乙第二号証)を見ても特段不自然な修理箇所は存在しない。

被告は、本件事故に関わった被害車両以外の車両の修理代金額が、原告主張の金額よりもずっと低額(加害車両は一万円程度、被害車両の前にいた車両が一五万円程度)であったとして原告主張の金額を争うが、しかし、かりに、被害車両以外の車両の修理代金額が被告主張のとおりであったとしても、修理代金額は、各車両の損傷箇所、損傷の程度、車種、年式、グレード等により差が出るものであることは明らかである。

本件の場合、被害車両の損傷の程度は非常に大きいと評価することはできないが、その損傷の箇所及び程度(甲第七号証、第一〇号証)、車種が乗用車でベンツであることを考慮すると、その修理代金額が特段に高額であるとは認められない。

したがって、基本的には原告主張の修理代金額を認めることができるが、甲第一号証の一は、訴外テックジャパンの請求書を引用しながら、金一三五万八四三七円を請求しているのに、その別紙に該当すると思われる甲第一号証の二の訴外テックジャパンの請求明細書では金一四三万四一四二円の請求があったことになり金額が食い違っている上、甲第四号証(領収証)によれば、訴外テックジャパンに訴外ゲットインターナショナル(原告が直接修理を依頼した業者)が支払った金額は、金一三五万八四三七円となっている。

よって、本件の修理代金額は金一三五万八四三七円とみるべきである。

二  代車料 認容額なし(金四八万三〇〇〇円)

原告は、被害車両の修理期間中代車を使用したとして二三日分の代車料金を請求している。

しかし、原告の職業は電気の配線等の仕事であり(甲第八号証)、原告の仕事上ベンツの乗用車を使用する必要性・相当性は必ずしも明確ではなく、また、本件事故は、訴外浦本が試乗している際に起きている(甲第八号証)が、その後訴外浦本が関与するところで被害車両が中古車として売却されていること(甲第八号証、原告の準備書面(2))等からみて、被害車両の修理期間中、本件被害車両の代車を使用する必要性があったと認めることは困難である。

よって、代車料としての損害を認めることはできない。

三  弁護士費用 金一五万円(金四五万六〇〇〇円)

原告が本件訴訟の追行を弁護士である代理人に委任していることは当裁判所に顕著な事実であり、本件事案の内容、認容額、審理経過等を考慮すると、被告が支払うべき弁護士費用としては金一五万円をもって相当と解する。

第四結論

以上により、原告の本訴請求は、金一五〇万八四三七円及びこれに対する遅延損害金を求める限度で理由がある。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 村山浩昭)

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